昼食後の会議やうちあわせは、頭がボーっとして、ついウトウト…
「ここで昼寝できればなぁ」と思うこともよくあります。しかし、仕事中だと「眠るのはマズイ」「昼寝をすると、夜眠れなくなる」と眠たさをこらえて頑張るしかありません。しかし実は、昼寝をすると仕事の能率をアップさせる効果があるのです。
■なぜ、昼食後に眠くなる?
どんなに十分睡眠をとっていても、昼食後には身体がだるく、頭はボンヤリ・・・。
その原因は、人間の身体にある睡眠と覚醒のリズムを調節する「体内時計」にあります。人の眠気のリズムは、「朝目覚めて、夜眠る」といった1日周期でリズムが動いているように思えますが、実は半日周期のリズムで起きていて、1日に2回、眠気の山があります。大きい山は午前2〜4時、小さい山は午後1〜4時です。このリズムと昼食が重なって昼食後は眠くなるのです。
そのうえ、消化のために体内の血液が胃などの消化器に集中し、脳への血液が少なくなるとともに、食べたものが消化されると血糖値が上がり、満腹中枢が刺激を受けるため、睡眠物質が働いてしまうため、眠くなってしまうのです。
■正しい昼寝のポイント
午後に眠気が襲ってきてしまうのは人間である以上、仕方のないことですが、忙しい現代生活では、睡眠不足が加わり、仕事の能率低下だけではなく、交通事故など日中の睡眠が原因になる事故も増えています。
●ポイント1:時間は15〜20分
「快適な睡眠の確保に関する総合研究班」(文部科学省)がまとめた、午後の作業能率が向上する“正しい昼寝の方法”によると、昼寝をし始めて深い眠りに入る直前の15〜20分で目覚めると最もリフレッシュ効果が高いとしています。
この15〜20分という昼寝の時間の長さは、眠りの質に関係があります。睡眠には、脳を休ませる深い眠りの「ノンレム睡眠」と、身体は休止状態で脳は浅い睡眠状態の「レム睡眠」があります。夢を見ているのは、「レム睡眠」の時です。人は就寝後3時間で最も深いノンレム睡眠状態に到達します。
昼寝は「ノンレム睡眠」の初期の浅い眠り。目覚めをスッキリさせるには、脳の活動レベルが深く下がる前に目覚め、覚醒への移行がスムーズに行われる15〜20分程度が適当だといえます。
30分以上眠ってしまうと、深い睡眠に入ってしまうので、睡眠から覚醒への切り替えが困難になるとともに、昼寝後の活動が鈍くなり、夜眠れなくなってしまうので注意しましょう。また、いくら眠気が襲ってきても、就寝4時間前に眠ってしまうと夜の睡眠に影響が出るので、昼寝は午後の早い時間が適しています。
●ポイント2:よい目覚めにはカフェインと光
研究班の堀忠夫・広島大教授(精神生理学)らは、大学生10人に目覚めに良い行為は何かについて5つの条件を比較し、脳派を測定しながら眠気がどれくらい残るかを実験を試みました。5つの条件とは、「15分の仮眠をとる」、「仮眠前にカフェイン200mg入りのコーヒーを飲む」、「仮眠直後に洗顔する」、「仮眠直後に1分間2千ルクスの高照度光を浴びる」、「仮眠をとらない」です。
すると、最も目覚めが良かったのは、「コーヒーを飲んでから昼寝をし、目覚めに太陽光など通常より明るい照明を浴びた」こと。コーヒーに含まれる覚醒作用のあるカフェインが脳に届くのに30分程度かかるため、20分程度の昼寝後にちょうどカフェインが効き出すため、良い目覚めにつながると考えられます。
カフェイン入り飲料については、コーヒーでもインスタントや缶コーヒーに比べてドリップの方がカフェイン量は多く、コーヒーが苦手であれば、ココアや緑茶、ウーロン茶にもカフェインは約半分量含まれているので、少し多めに飲むと良いとされています。
■昼寝の効用
昼寝には脳を休める疲労回復効果や、脈拍が少なくなり、血圧も下がるなどの心身のリラックス効果もあり、最近は昼寝の効用が注目されています。
労働省産業医学総合研究所の調査では、20、30歳代の男女30人を「昼食後15分の仮眠」と「昼食後45分の仮眠」、「睡眠なし」の3グループに分け、一定時間に英文を書き写すテストをしたところ、刺激に脳が一番速く反応し、またテストでミスが少なかったのは、「15分仮眠」のグループでした。
また、久留米大学医学部の教授らが高校生約1000人に対して40日間かけて行った調査では、昼休みの45分間のうち15分間昼寝をした生徒は、昼寝をしなかった生徒よりも、「授業に集中できる」「勉強の能率が上がった」「成績がアップした」と答えた数が多い結果となりました。つまり、昼寝をすると、頭がよく働き成績アップも望める可能性が高いのです。
このように最近の研究で、昼寝が仕事や勉強の能率がアップさせることがわかってきています。「昼寝は怠慢」などと悪者扱いせず、眠たいときは思いきって15〜20分間昼寝をして、能率アップをめざしましょう。