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貧困大国・日本がわかる本

09.19.2015 · Posted in 子ども, 社会, 貧困

●「貧困大国・日本」の現実から目を背けてはいけない
日本の貧困問題をあぶりだす3冊
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44788

AFPBB News〕2015年4月の厚生労働省の発表によると、日本のホームレス数は6541 人。最も多かったのは大阪府で1657 人。

 

2017年4月に予定されている消費税の10%への増税。先日、財務省が軽減措置としてマイナンバー制度の活用を検討(・・中略・・)消費税増税の大きな一因になっている、未曾有の高齢化社会の到来。年金や医療費、介護に必要な社会保障給付の急激な伸びが、財政を圧迫していることは、周知の事実です。

まる子の爺さんのような老後は送れない

その高齢者社会の異変を取り上げたのが、『下流老人』(藤田孝典著、朝日新聞出版)。
『下流老人』(藤田孝典著、朝日新聞出版、821円、税込)
例えば、アニメの「ちびまるこちゃん」でお馴染みの友蔵じいさん。子ども家族と同居し、趣味の俳句を楽んだり、まる子に何かをせがまれては、年金 で買ってあげようとしたり。そんなふうに、のんびりと平穏に余生を暮らす――日本の高齢者のイメージを友蔵じいさんに重ねて見る方も多いかと思います。

しかし、現在の日本では、友蔵じいさんのような悠々自適の老後を送ることが難しくなってきました。アパートの家賃が払えない、医療費が払えず通院できない、何日も食事をとれていない・・・。

著者は、埼玉県を中心に、生活困窮者支援を行うNPO法人の活動に携わっており、貧困問題を抱える多くの高齢者の相談を受けてきました。

その理由は様々ですが、いずれも一朝一夕に解決できる問題ではありません。なぜなら、少子化や核家族化の進行、若年層の非正規雇用やワーキングプアの増加、未婚率の上昇など、現在の日本社会が抱える問題が、幾重にも複雑に重なった結果だからです。

そのため、根本的な解決は今のところ難しく、誰にでも起こりうる問題でありながら、相談者個人に合わせた対処療法しかないのが現実です。

それでも、著者は、生活保護を含め現在の社会保障制度の改善を訴えながら、個人でもできる防衛策を伝えています。

本書のタイトル「下流浪人」は、著者の造語で、生活保護基準相当で暮らす、またはその恐れのある高齢者を指しています。インパクトのある言葉ですが、あまり定着はしてほしくはありません。むしろ、書店の店頭から本書が消えるような社会を目指したいものです。

 子どもの貧困問題はさらに深刻

近年、高齢者と並んで、子どもに関しての貧困問題もクローズアップされ、関連する書籍のコーナーを設ける書店が増えています。続いては、その中の1冊を紹介しましょう。

貧困の中の子ども』(下野新聞 子どもの希望取材班著、ポプラ社)。

『貧困の中の子ども』(下野新聞 子供の希望取材班、ポプラ社、780円、税別)

前述の『下流老人』の中で、貧困問題に陥る高齢者のパターンとして、収入が著しく「少ない」、十分な貯蓄が「ない」、頼れる人間が「いない」の、3つの「ない」を指摘していました。

本書で問題提起する子どもの貧困問題にも、悲しいことにその3つの「ない」が当てはまります。ただ、高齢者の場合に比べ、子どもたちはより受動的です。知らない間に貧困問題に陥り、自分たちだけではどうにもならないだけに、事態は深刻です。

本書は、栃木県・下野新聞の大型企画をまとめた本です。貧困問題に直面する様々な親子の姿、対応する自治体、学校の現場を追いつつ、これからの社会ができることを探っていきます。

新聞社の特性を生かした丁寧で多角的な視点の取材は、内外から高く評価され、ジャーナリズムに関する数々の賞を受賞しました。特に、「世界第3位の経済大国・日本に信じがたい現実がある。」から始まるプロローグは、必見です。

本書をただの子どもの貧困問題のルポルタージュに終わらせず、解決までの道筋を示したい、との並々ならぬ決意を感じる熱い文章です。

子どもの貧困は、高齢者の貧困問題以上に、個人ごとの対処療法で済まされる問題ではありません。この国に生まれた子どもたちが、置かれた環境に支配されることなく、希望と共に育つ社会を作れるかどうか。

大きな意味で、いま私たちが試されている問題だと言えるでしょう。

無関心は許されません。

 

フリーター、ワーキングプア、格差社会?

「子どもと性行為は汚いから嫌い」と潔癖であることを明かし、物議を醸しだした古市憲寿氏。その後も、「合唱している中学生の顔の造形が辛い」など、お茶の間を騒がしていますが、本職は社会学者。

その彼の代表作が、『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)です。

『絶望の国の幸福な若者たち』(古市憲寿著、講談社、1800円、税別)

高齢者と子どもに関する書籍を紹介しましたので、最後に若者論の本書を紹介します。

フリーター、ワーキングプア、格差社会・・・。取り巻く環境が厳しく、何かにつけて「不幸」が枕詞につく現代の若者たち。しかし、2010年の時点ですが、20代は男女とも65%以上が現在の生活に「満足」しているという統計調査の結果が出ました。

著者は、実際のフィールドワークを重ねつつ、さまざまな資料や知識人の発言を踏まえながら、この数字の背景を探っていきます。

そこから見えてきたのは、未来の幸せのために生きるのではなく、今の幸せに目を向ける「内向き」な若者の姿でした。

もちろん、その背景には、これからの日本社会への絶望が含まれていることは言うまでもなく、それがタイトルにも繋がっています。

本書は、冒頭で著者自ら言っているように、若者のパーフェクトマニュアルではありません。ただ、現代の若者を理解するための参考書にはなります。あくまで参考書だからか、これから日本社会に対する提言はありません。個人的には、ここに物足りなさを感じてしまいます。

その代わりかも知れませんが、「財政破綻? 侵略される? だから何?」と刺激的な見出しで著者の主観的な考えが提示されています。冒頭の発言も踏まえ、おそらく自分に正直な方なのでしょう。その独自のキャラクターを含め、今後の動向に注目です。

このように、世代別の書籍を読んでいくと、どの世代でもこの先、不安が・・・。2017年4月の消費税の再増税分が、有意義に使われることを私たちは今以上に見届けて行かねばなりません。

 

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