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今どきの子どもたち
【お母さんにいわないで!】


 養護の先生に用事があって保健室を訪ねた。ちょうど1時間目が終わるくらいの早い時間だ。すでに奥のベッドで寝ている生徒がいた。高学年の女の子らしい。

 「○ちゃん、大丈夫?お母さんに連絡しようか?」と先生が生徒に声をかけた。
 「もう少し寝たら、大丈夫。電話はしないで」と女の子は小さい声で答えた。
 「朝、具合が悪いって、お母さんに言ったの?」
 「・・・・・」
 返事はなかった。

 「最近の親は、少しぐらい子どもが具合が悪くても、学校に来させちゃうのよ。子どもの様子、見てないのかしら・・・」と先生はひとりごとのようにいった。

 私なら我が子が朝ちょっとでも具合が悪そうだったら、とりあえず学校には行かせず様子を見る。途中で元気になってきて大丈夫そうだったら、3時間目くらいから登校させる。ダメそうなら、学校に「今日はやはり行けそうにないので、お休みします」と電話を入れる。

 子どもの様子は、急激に変化する。朝元気でも、2時間後には急変することもある。起こすところから、いつもと様子が違うかどうか、よくチェックする・・・というよりも、母親のカンのようなもので、少しの異変に気づくものだ。

 その後、PTAの仕事でバタバタした後、再度、保健室へ。4時間目が始まったころだった。
 女の子はまだ寝ている様子だった。私と話しをしながら、生徒のことを気遣って声をかける先生。

 「ねぇ、お母さんに迎えに来てもらうように連絡していいでしょう?」と先生。
 「まだ、連絡しないで!」と女の子。
 「熱が37度ちょっとあるし、ここで寝てても治らないよ。病院にいって、ちゃんと診てもらったほうがいいよ」
 「まだ、大丈夫だから電話はいいです」と女の子。

 私の顔をちらっと見ながら、「さっきから、何度繰り返したか・・・」
 急に思い直したのか、「ねえ、もしなんかあったら大変だから、もう、電話するね。先生じゃ病名もわからないし、治すこともできないから」と、電話番号を探し出した。

 すると半泣きの声で、「電話しないで、お母さんに怒られるから・・・・」

 私はびっくりした。
 具合の悪い子を怒る?!なぜ?

 「最近の親のなかには、けっこういるのよ。具合が悪くても、子どもを学校に行かせて、好きなことやってる人が。仕事もあるかもしれないけど、自分の時間を邪魔されたくないんだよね」と先生はぼそっと言った。

 もし学校から「お子さんの具合が悪いから迎えに来てください」という言葉を聞けば、どんな親でもすっ飛んでくると思っていた。私なら我が子が具合が悪いなら、仕事もやりくりして、とりあえず迎えに行く。行けない場合は、夫や近所の親しくしている人に頼み、いきつけの病院に連れて行ってもらう・・・と、最悪の場合の、シミュレーションはできているが、まだ、使ったことはない。

 なんて親なんだろう・・・と、腹が立った。
 でも、すぐに、その子のつらい気持ちを察して、胸が痛くなった。

 この子にとって、学校の保健室が唯一、誰にも邪魔されない場所なのだろう。既に、何度か迎えに来てもらった時に嫌な思いをしているのかもしれない。家にいても居場所がなく、「学校へ行きなさい」といわれる。

 具合が悪くても、それをいったら、なにをいわれるか、わからない。「お母さんが仕事を休まなきゃいけない」「用事をキャンセルしなきゃいけない」「お母さんが困る」と、気を使う。それだけにとどまらず、もし学校を休んでしまったら、「あんたのせいで、スケジュールを変えなきゃいけないじゃないの」とヤツあたりされる。そんな場所で、具合がよくなるわけはない。

 子どものほうが、親に気を使っている。親に迷惑かけないように、困らせないように、気を使う子どもたち。そんな子のことを、どれほど、親はわかっているのだろうか。

---2000.5.25 (c) 2001 by Mica Okamoto ---


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