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[No.039 :室内に散布する殺虫剤は安全?]

 「すみずみまで効く」という謳い文句で宣伝している閉め切った部屋で散布する殺虫剤。煙やガスで薬剤が行き渡るので、見えないところに潜んでいるゴキブリやじゅうたんの繊維の中にいるダニも退治してくれるのだろう、と誰もが思う。そのうえ、マンションで行うと、自分の家にいた害虫が他に移動し、その後寄りつかない…といったCMの映像を見せられると、これはラッキーと思わず使いたくなる。

 なぜ、虫がいなくなって寄りつかなくなるか、をよく考えてみると、薬剤が家中に付着したままだということに気づく。壁もじゅうたんも家具の表面にもべったり薬剤がついたままなのだ。そのおかげで虫が寄りつかないので、安心と思うが、子どものいる家ではそうはいかない。

 赤ちゃんや小さい子どもはなんでも口に入れたがる。床に転がるおもちゃもクッションの端も、カーテンの裾やシートカバーも口に入れたりするかもしれない。それに殺虫剤がついたままだったらどうなるのだろうか。

 国民生活センターが、室内にどれくらい薬剤が残るかを6畳のプレハブで調査したところによると、どの銘柄も散布される殺虫剤の成分の量は、ゴキブリに直接吹きかけるスプレー式殺虫剤ほぼ1本分に相当したという。成分は農薬でも使われるピレスロイド系のものである。

 ある実験でピレスロイドを妊娠中の動物に投与すると、生まれた子に脳の障害が現れ、子どもが成長しても障害が残ることがわかっている。また、動物の幼少期にこれを投与すると、行動や脳の機能に影響を与えるということも報告されている。

 散布後、換気すれば空気中から薬剤は消えるが、カーテン、壁紙、床に付着した成分は減らずに残った。特に、エアゾールタイプのものは床への付着が多く、粒子が重いため高いところまで広がらず、床面での残存が多いという。

 毒性をみると、エアゾールと加熱蒸散タイプで30cm四方の床に残ったのは、体重50kgの人のADIだった。ADIとは、人が一生食べ続けても安全と考えられる1日摂取許容量である。50kgの人なら大丈夫でも、10kgにも満たない子どもならどうなるのだろう。直接口にするわけではないとはいえ、アレルギー体質の人は心配である。そのうえ、シックハウス症候群の心配もあるのではないか。

 実際には「タンスや押入のものが変色した」「肌がかぶれてチクチクする」などの苦情もあるそうだ。

 これらの商品には、散布する際には食品を置かない、食器や布団、観賞魚などには触れないようにカバーをするなどの注意書きがしてある。煙の侵入を防ぐように使う際にはきちんとしている人はどれくらいいるのだろう。国民生活センターはこの調査を元に業界に表示の改善を要請する予定だ。

 昔は木の家に住み土とのふれ合いも多く、たくさんの虫と共生してきたが、最近は身近な自然が減って虫が目の敵にされやすく、機密性が高く通気性が悪い住宅事情で、ダニなどの虫の発生も少なくない。虫とふれあう機会が減ったため虫を毛嫌いする人も多い。

 殺虫剤は害虫を殺すもので、生物を殺すという意味では、いくら量が少なくても人間にも影響する部分はある。虫除けスプレーも洋服の防虫剤も電気式蚊取りでも、かぶれやかゆみ、アレルギーなどの原因になることは十分に考えられる。

 わざわざ薬剤散布のために数時間外出をし、アレルギー原因のダニを退治するために使った殺虫剤でアレルギーになってしまってはあまりにも悲しい。

[参考サイト]
国民生活センター「一回使い切りタイプの殺虫剤の室内残存量を調べる」

---2002.9.25 (c) Mica Okamoto ---

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