「ゲーム脳」という言葉、子どもを持つ親なら聞いたことがある人は多いと
思う。「テレビゲームばかりしていると脳に悪影響を与える」というふうに理
解されていて、ゲーム中毒のような依存症や現実と仮想の区別がつかなくなっ
てゲームの残酷な描写を実際にやってみたくなる・・など様々な弊害をすべて
指すことだと捉えられている。
この言葉を世に広めたのは、2002年に出版された『ゲーム脳の恐怖』(NHK
出版)。著者は、日本大学文理学部体育学科教授、森昭雄氏である。大学の教
授の本ということで、確実な検証に基づく出版だと誰もが思い、子どもにゲー
ムをやらせてると大変なことになると危機感を持った親も多いと思う。
この「ゲーム脳」について、アンチ・ゲーム志向の教育者やメディアに支持
される一方で、脳神経の専門家などから疑問や批判が起こった。
精神科医の斎藤環氏は、「この先生は、実際に脳波をとったことがない」、
さらには「この本は、簡易脳波計の販売促進のために書いたのではないか」
とまで言わしめている。
▼「ゲーム脳」徹底検証
斎藤環氏に聞く ゲーム脳の恐怖3
ゲーム脳という言葉で世間が騒がれるなかで、様々な科学者からの批判が続
出したが、ゲーム脳に関する医学的な論文は発表されないままということは、
科学的に実証された理論ではないということ。現在では、科学的根拠のない
「擬似科学(ニセ科学)」ということで落ち着いている。
しかし、この本は今でも販売されていて、全く知らない人が手にとって読む
と、思わず信じてしまう人も少なくないはずだ。それに今でも、ゲームは子ど
もの脳を壊すと思い込んでいる人もいる。「ゲーム脳」とゲーム依存症とは、
別の問題だが、一般人はそれほど明確に区別して理解できるとは限らない。
医学博士や大学教授という肩書のある人の健康や医療関係の本は、常にもの
すごい数が出版されている。その内容は実験や調査などを根拠にしているため
一般人からすると、余程胡散臭い内容ではない限り、うのみにしてしまう。そ
の実験や調査方法が科学的にみてどれだけ信頼できるかなんて、素人にはわか
るはずもなく、そのうえ、マスコミが本の宣伝のために、タレントを使ったり
TVで露出したりすれば、そういう情報にまんまと乗せられ買い物をしてしま
っている人は少なくない。
最近は新聞にサプリメントの広告がでかでかと載り、雑誌には記事なのか広
告なのか判別しにくいページが多いし、ネットの情報はまさに玉石混交。専門
家からエセ科学といわれている単行本も普通に売られている。その本の内容を
信じるか信じないかは自己責任。本を信じて体調がおかしくなっても、著者を
訴える人など日本ではいない。(アメリカではいるかもしれないが)
自分のことを守るには、なんでも簡単に信じないように心がけることと、自
分のリテラシーを鍛える努力をすることしかないのだろう。
▼ゲーム脳 Q&A
▼ゲーム脳 Wikipedia
---2010.03.03 (c) Mica Okamoto ---
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