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[No.017:蓄積されてきた漢方薬の臨床試験データ]


 漢方は経験医学といわれ、患者の証を見て、臨機応変に治療を進めるため、同じ症状が出ていても、治療方法が違っています。そのため、科学的データに乏しい医学と現代医学の立場から突き放された見方をされがちでした。

 しかし、漢方薬エキス製剤の登場で薬剤の品質が安定し、漢方薬の臨床試験データも数多く蓄積されてきました。

◆根拠に基づいた医療「EBM」

 今、医療の世界では、信頼のおける科学的データをもとに診断したり、治療法を決定したりする「EBM〜evidence based medicine」という言葉が流行しています。今までのような個人の経験や信念からだけではなく、あくまでも実際のデータを根拠にするもので、厚生省も注目しており、EBMに基づく保健政策や診療ガイドラインづくりを始めています。

 EBMで用いられるデータにはランクづけがあり、最も信頼されるのは無作為比較試験で、最も信頼性が低いものは経験や権威者の意見とされています。前者のなかのひとつ「二重盲検プラセボ対照無作為比較試験」は、ある薬の有効性や安全性を見るために、患者を乱数表で割り振って本物の薬と偽薬を投与するものです。本物と偽薬は外観では区別できず、患者も医師もどちらを投与されているのかわかりません。

 漢方薬でもこのような臨床試験が行われていますが、医師のなかにもこのような現状を知らない人が多いとか。漢方は個々の証が重視され、画一的な治療に向かないといわれながらも、安全性や毒性を見る臨床試験が行われ、データは着実に増えています。

◆二重盲検試験

 いくつかの漢方薬において二重盲検試験によってデータが蓄積されています。その一部をご紹介します。

【小青龍湯(しょうせいりゅうとう)】
 水様性の痰を伴う咳、水様性鼻汁、くしゃみなどがあるときに用いられ、気管支炎、気管支喘息、鼻炎などによく処方されます。アレルギー性鼻炎など鼻アレルギーに対する二重盲検試験は、93〜94年にかけて、全国61ヵ所の耳鼻咽喉科が参加し、220例の患者に対して実施されました。

 220例のうち途中でやめた者などを除き186例(本物:92例、偽薬:94例)を評価の対象にしたところ、本物と偽薬では症状の改善に差が認められました。本物では、はっきりと改善した者が12%、中等度改善は32.6%で、あわせると44.6%の半数近くの人が改善したことになります。偽薬では、はっきりと改善した者が5.3%、中等度改善は12.8%で、明らかに本物と違いが出ました。

 有効例を詳細に検討したところ、アトピー性皮膚炎など他のアレルギー症状を伴う人は、アレルギー性鼻炎単独の人に比べて有効率は低かったそうです。副作用は、本物群では軽度の消化器症状、頭痛、顔面の浮腫などが7例、偽薬でも7例で全く差がありませんでした。

 このほかに二重盲検査試験としては、風邪症候群に対して【麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)】、便秘に対して【大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)】、脳卒中の後遺症で見られる脳血管痴呆症に対して【釣藤散(ちょうとうさん)】、慢性活動性肝炎に対して【小柴胡湯(しょうさいことう)】など、有用性が検討されています。また、貧血やエイズに対しても臨床試験が行われ、着実にデータが増えていっています。

 最近、西洋医学の医師も漢方の治療を取り入れる人が増えてきました。現代医療は、症状を抑える対症療法なので、根本的な治療までは難しいといわれます。一方、漢方医学は、個々に合わせているので、体質や生活環境なども治療に考慮され、体質改善も含めて病気にならない体をつくるといわれます。患者にとって、現代医学と漢方医学の両方を駆使して、病気を治したり、悪い体質を改善してくれる医師が、一人でも増えてほしいですね。

参考:週刊朝日増刊号「漢方2000」            

---2000.5.6 (c) 2000 by Mica Okamoto ---

 

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