I'm fine ! といつでも言える暮らしのために役立つ情報がいっぱいです。    
Home Health Supplement Child DietBeauty  
Healthトップ>[Pickup News]>No.064  
 


[No.064: 水道水に潜むクリプトスポリジウム]


 水道の塩素消毒でも死なない病原性原虫「クリプトスポリジウム」。感染すると、激しい下痢を起こします。最近、日本国内の河川でクリプトスポリジウムが検出される例が増えています。

■ミルウォーキーで40万人が感染

 93年4月2日、アメリカのミルウォーキーで、5歳の少女が激しい腹痛を訴え病院に運ばれ3日後に死亡。会社員の男性は意識を失うほどの腹痛で病院に運ばれました。その週末、病院は激しい腹痛、下痢、おう吐で運ばれる患者であふれました。

 その後、水道水の水質検査でクリプトスポリジウムが発見。5ミクロン(1000分の5mm)の原虫は、浄水場のろ過装置を簡単に通ってしまったのです。そのころ、雨の日が続いており、雨が上流にある牧場の家畜の糞を大量に含んだ表面水を川に運んでしまったのでは、と考えられました。

 感染者は40万人、約400人の死者を出したこの事件で、クリプトスポリジウムは世界的に注目されるようになりました。日本では96年に、埼玉県越生町で、町人口1万4000人の8割以上に当たる8800人が感染しました。

■クリプトスポリジウムとは

 正式には胞子虫綱、真コクシジウム目、クリプトスポリジウム科に属する単細胞の寄生虫で、家畜や野生動物に寄生します。クリプトスポリジウムには、たくさんの種類があり、このうち口から入って人や牛の腸管に寄生して下痢症を起こすのはC.parvumという種類で、世界中に分布しています。

 飲み水や食べ物を通して人間が感染すると、腸内で繁殖し、激しい下痢が続きます。便に含まれる原虫は河川でも生き延びられ、大腸菌の約69万倍も塩素抵抗性があるため、通常の塩素濃度による消毒では死にません。しかし、乾燥、凍結、熱には弱いため、飲料水を煮沸することで消毒できます。

 感染すると、激しい水様性下痢(血便にはならない)と腹痛、さらに6〜7割の人では38度程度の発熱を起こします。今のところ有効な治療方法はなく、健康な人が感染すると数日から2週間ほど下痢が続いた後、自然に治るまで待つしかありせん。人への感染は夏期に多発しており、幼児への感染率が高く、幼児が感染すると症状が重くなるため、注意が必要です。

■膜ろ過施設で浄水処理

 クリプトスポリジウムは、凝集沈殿・砂ろ過という、薬品を入れて汚れを強制的に沈殿させて、ろ過する、最も一般的な浄水方法で、大半を取り除けますが、広い敷地が必要になるため、小規模の施設では困難です。

 埼玉県越生町では、川の水の透明度が高く、汚れを沈殿させる薬品を入れず、塩素消毒だけで済ませていたため、大量の感染者を出したと見られています。

 厚生労働省が97年に全国94水源水域の282地点で調査をしたところ、6水域8地点で検出されています。また、6市町の簡易水道では、クリプトスポリジウムとそれに似たジアルジアが検出され、給水停止になっています。

 厚生労働省は、河川や井戸を水源にする浄水場1万1220のうち、154は上流に汚染源になりうる畜産施設などがあるのに、クリプト対策が不十分として、原虫を取り除ける「膜ろ過」施設の導入などの対策を促す指針を、今年の夏に通知する予定です。

 膜ろ過は、セラミックや化繊でできた微細な穴があいた膜を通して、水を浄化する技術で、今までよりも、クリプトを除去できるとしています。すでに、全国で約200の浄水場が膜ろ過を導入しています。

 今まで安全だと思っていた水道水について考え直し、また、水質を知って、自衛することも必要になってきたといえます。また、川の水を、見た目がきれいだといって、安易にすくって飲むということも避けたほうがいいでしょう。

---2001.5.19 (c) 2001 by Mica Okamoto ---

 

Healthトップページ