[No.108 : ポテトチップスに含まれる発ガン性の「アクリルアミド」]
2002年厚生労働省が報じた「ポテトチップスに高濃度発がん性物質」という情報を記憶している人も多いと思います。
これは、ポテトチップスやフレンチフライなど、ジャガイモを高温の油で加工調理した食品などから高濃度の発がん性物質「アクリルアミド」が検出されたとして、厚生労働省は炭水化物の多い食品の調理方法や揚げ物などの過度な摂取に注意するように消費者に呼び掛けたものです。
■「アクリルアミド」とはどんなもの?
「アクリルアミド」は、地下工事での土の凝固剤や接着剤、塗料などに使われていた化学物質です。
2002年4月24日、スウェーデン国立食品局(NFA)は、ストックホルム大学との共同研究の結果、動物実験において、炭水化物を多く含む食品(じゃがいもや穀類など)が「焼く」「揚げる」など高温で調理された場合、発がん性が指摘されるアクリルアミドが生成され高濃度で検出された結果の数値を発表しました。
この報告によると、特にポテトチップスはアクリルアミドの検出率が高く、一般的なポテトチップス1袋にアクリルアミドが、WHOが飲料水の許容範囲としている濃度の500倍もの量が含まれているとされています。また、スウェーデンのファーストフード店で販売されているフライドポテトはその濃度が約100倍だったともいわれています。
その後、イギリスでは5月17日、アメリカは9月30日に同旨の発表を行い、アメリカ政府は2003年には食品中のアクリルアミドの濃度を低くする方法を発表する予定にしています。
カナダ健康省の報告によると、アクリルアミドはアミノ酸の一種であるアスパラギンとブドウ糖が加熱反応して作られることがわかっています。
■食べないほうがいいの?
スウェーデンの研究チームは、多くのガンの原因がアクリルアミドであることを考え調査結果を発表しましたが、スウェーデン食品庁は、特定の食品に対して警告を出すことなどしませんでした。
厚生労働省は、国立医薬品食品衛生研究所に対して加工食品中のアクリルアミドの調査を依頼、緊急の研究班(厚生労働科学特別研究)を組織し検討をした結果、10月31日国立医薬品食品衛生研究所での調査結果を報告しました。
これによると、消費者へは特定の食品を食べるなという警告はせず、
・揚げ物や脂肪食の過度な摂取を控え、十分な果実、野菜を含む様々な食品をバランスよく取る。
・炭水化物の多い食品を焼いたり、揚げたりする場合にはあまり長時間や高温の調理は避ける。
という内容にとどまりました。調理時間を短くしたり油の温度を下げたりすると調理不足による食中毒の心配もあり、神経質になり過ぎないようにということもあるようです。
食品の「アクリルアミド」については、コーデックス委員会食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)やFAO/WHO合同添加物専門家会議(JECFA)も含めて、国際的な検討が続けられるでしょう。
各国の発表によると、とりあえずはポテトチップスなどを食べるのを止めなくてよさそうです。しかし、今後の厚生労働省からの情報を参考にする必要があります。発ガン性のあるアクリルアミドのことを聞いてしまうと、ポテトチップスを食べるのを躊躇してしまいます。みなさんはどう思われますか?
【参考サイト】
▼厚生労働省「加工食品中アクリルアミドに関するQ&A」
▼国立医薬品食品衛生研究所「食品中のアクリルアミド分析結果」
---2003.3.31 (c) Mica Okamoto ---
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