インドネシアにいった際、必ずといって見かけた「テンペ」。大豆を板状に成型した感じ。揚げテンペは、大豆入りのさつま揚げや油揚げの水分を抜いたような食感で、油くささはなく、おつまみともおやつともいえそうな食べ物で、いかにも庶民の味。どこか懐かしい味のテンペは、大豆の栄養が凝縮されていて、日本でも注目されつつあります。
■インドネシアの納豆
テンペは、インドネシアでは、肉や魚の代わりに食べられている庶民の日常食。日本の豆腐屋のように市場などにテンペ専門の店や屋台が必ずあります。
「インドネシアの納豆」といわれるのは、大豆の煮豆にテンペ菌をまぶして、30〜37度で20〜48時間発酵させてつくるからです。しかし、納豆菌は細菌なのに対し、テンペ菌はクモノスカビという白カビなので、納豆よりもこうじ菌で発酵させた味噌に近いといえます。
全体が、白カビで覆われており、見た目は「こうじ」や「カマンベールチーズ」のような感じ。納豆のように糸引きや臭いはなく、大豆の煮豆の味。包丁でカットして、煮たり、焼いたり、揚げたり、サラダなどで食べます。日本ではほとんど馴染みがないが、アメリカでは20年ほど前から普及し始め、豆腐や豆乳などとともにスーパーの店頭で売られています。
■血圧を下げる効果、イソフラボンや食物繊維が豊富
多くの大豆食品と同様に、高タンパク質で食物繊維、カルシウムなどのミネラルを豊富に含み、血中コレステロールや血圧を下げる作用もあります。
インドネシアのテンペは、血栓溶解作用もあるとされます。しかし、日本で売られているものは、菌の種類が少ないなどの条件が違うため、血栓溶解作用はあまり期待できません。
他に、
リノール酸:血管をしなやかに保つ。
ビタミンB群:疲労回復に役立つ。
ビタミンE・サポニン:抗酸化作用で脂質の酸化を防ぎ、老化防止。
レシチン〜血中コレステロールを抑え、動脈硬化、心臓病、脂肪肝の予防。
このようにさまざまな栄養が含まれ、生活習慣病の予防に役立つといわれています。
■吸収されやすいイソフラボン
日本で市販されているテンペは、味噌に比べ、イソフラボンが数倍、吸収されやすい形で摂取できます。
イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをする機能性成分で、エストロゲンが減少した場合の代わりとして働くため、生理不順や骨粗鬆症、更年期障害などの予防ができます。
このイソフラボンの1日の必要量を味噌汁だけで摂ろうとすると、15杯も飲まなければならないが、テンペなら1日50gで必要量のイソフラボンが摂取できるといわれています。
■いろいろな料理法にもあう
テンペは、納豆のような独特の臭いがなく味も薄い。生で食べると、柔らかいカシューナッツ」という人もいるようですが、味つけ前のゆでた豆を食べたような感じで決しておいしいとはいえません。しかし、どんな味にでもあうので、上手に調理すればおいしさは増します。
インドネシアの街中のテンペ屋台では、油で揚げたテンペに、レッドチリ中心のエスニック風「サンバルソース」をつけて食べるのが、最も手軽でポピュラーな食べ方です。
揚げたテンペに塩やショウガ醤油、大根おろしをかけてもおいしい。唐揚げ粉をつけて揚げれば、まるで鳥の唐揚げ。でも、植物性タンパク質で脂っこくないので、ベジタリアンやダイエットにも適しています。
肉の代わりにハンバーグやカレーに入れたり、酢豚風に傷めたり、揚げたテンペをサラダにトッピングしたり、工夫すればいろいろとおいしく食べることができます。
大豆の恵みを上手に摂れるテンペ。ぜひ、オリジナル料理法でトライしてみてください。