「規則正しい生活を」と子どもの頃からいわれ、うっとうしい思いをした憶えのある人は多いだろう。私自身、子どもに向かって「早く寝なさい」という大人が夜遅くまで楽しんでいるのかと思うと、「なぜ子どもだけ早く寝ないといけないんだ」と理不尽な思いをしたものだ。好きな時間に起きて、好きな時間に寝るという勝手気ままな生活ができる大人に早くなりたかった。

　大学生になった途端、徹夜で遊んだり、昼夜逆転の生活をしてみたり、最高何時間寝られるか挑戦してみたりを始めたが、やってみると、不規則な生活で体がだるかったり、徹夜の翌夕にはどうしようもない睡魔に襲われたり。「結局、徹夜や不規則な生活はもったいない」ことに気付くと同時に、人間には各活動に適した時間帯があることも薄々感じ始めていた。

　人間には生体リズムがある。昼間は交感神経が中心に働いているから活動できるが、夜寝ている間は副交感神経が働いてリラックスできるし、自律神経や内臓にも各々の機能する時間帯がある。最近それを知って、人間の体のすごさに改めて驚いた。

　先日、皮膚科医師に取材した際、ある皮膚病についての予防法を聞くと「１日３食きちんと食事することと、夜寝ること」という答えが返ってきた。そんな当たり前のことが予防につながるのかと思い、突っ込んで質問してみると、「うちに薬が効かない患者さんがいて、薬を強くしてみてもいっこうに治る兆しがない。それが、しばらくして会ったら驚くほどきれいに治っていた。どうしたのか聞いてみると”急に薬が効いて、すっかり治ってしまったんですよ”と言う。よく聞いてみると、ちょうどその時期に転職していた。バーテンダーとして夜働いてたのが転職して昼間働くようになったら薬が効いて、治ったというわけです。生体リズムに逆らって生活していると、効くはずの薬も効果がない」

　食事も「栄養のバランスを気にするのもいいけれど、そこまでしなくても、とにかく１日３回、ご飯と味噌汁みたいな普通の食事をしてほしい。スナック菓子とかフライドポテトとジュースなんていうのは食事じゃないからね」

　コンビニやファミレスは24時間営業で、食べたいときにいつでも食べられるし、深夜の娯楽も増えた。でも大事なのは、朝起きて朝食を食べ、正午ごろに昼食を摂り、夜９時までに夕食を食べて、午前０時ごろまでに寝ること。こんな自然なことがわからなくなる現代は、不便な時代とも言える。

---2000.8.28　(c) 2000 by Mica Okamoto ---