家族のいびきに悩まされる人は多いが、慣れてしまうとけっこう平気になるという人もいる。ただし、歯ぎしりはそうはいかない。夜中に「ギシギシ」「キリキリ」とあの窓をひっかいたような音には思わず飛び起き、鳥肌がたってしまう。それほど不快感を与える音なのに、本人はいっこうに目覚めないのは不思議なものだ。
歯ぎしりにも種類があり、かみしめや食いしばりの「クレンチング」、カチカチと噛む「タッピング」、ギリギリと音をさせる「グラインディング」と分けられる。どんな人でも歯ぎしりはするといわれ、95%の人が15分程度はするというデータもある。しかし、40分以上続く場合「歯ぎしり症=ブラキシズム」と呼ばれる。
悩みや不安など心理的なストレスが誘因となり、歯ぎしりや食いしばりでストレスを発散させようとするとされている。また、噛み合わせの悪い歯があったり、治療後の詰め物や金属などがうまくあわなかったりすることでも起きる。歯痛があると人は本能的に歯ぎしりするという。
歯ぎしりがひどい人の7割に無呼吸が多いという報告もあり、睡眠時無呼吸障害との関連もあるといわれている。どちらも顎の筋肉の動きが関係しているので関連性を疑われて当然だが、解明はされていない。
睡眠時無呼吸症で目立つ症状のいびきは耳鼻科、歯ぎしりは歯科の専門領域だが、そのメカニズムはまだ解明されていない。しかし、治療法はある。歯ぎしり防止のマウスピースをつけたり、歯の咬合の不調和を整えたり、歯のぐらつきを防止する方法などだ。
これで本当に治ればいいのだが、歯ぎしりは睡眠中の無意識の状態で起こる悪習癖で本人が意識して治すことができない。そのため、歯科では対症療法を行うしかなく、完治させるのはなかなか難しいようだ。
歯ぎしり音が本人は気にならないからといって放っておくと大変なことにもなりかねない。歯の摩耗や破折、歯が抜けたり、知覚過敏、歯周病の悪化や顎関節症、口を開けるときの痛み、頭痛になることもある。ひどくなると自律神経のバランスを崩すこともあるという。
朝起きたときに顎周辺に疲労感やこわばった感覚があるなら、たかが歯ぎしりと考えず、顎関節症を専門とする歯科医に相談したほうがいいだろう。
---2003.7.7 (c) Mica Okamoto ---
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