[No.009:出血を止め、骨を丈夫にするビタミンK]
出血を止めるビタミンとして知られてきたビタミンK。最近では、骨を丈夫にするために、なくてはならない栄養素として注目を浴びています。
■ビタミンKとは?
脂質の中に溶けこんで存在する脂溶性のビタミンです。ビタミンKは、K1からK7まで7種類あります。天然のものは、K1(化学名:フィロキノン)とK2(化学名:メナキノン)の2種類で、残りのK3、K4、K5、K6、K7は化学的に合成されたものです。
ビタミンK1は、主に植物の葉緑体で作られます。このため、同じ植物でも、緑色の濃い葉の部分に多く含まれ、同じ葉でも、陽に多く当たる表側のほうが含有量が多くなります。
一方、ビタミンK2は、微生物によって作られます。ビタミンK2を作り出す微生物として有名なのは納豆菌。このため納豆にはビタミンK2が多量に含まれています。また、動物や人間の腸内に存在する様々な細菌(腸内細菌)も、ビタミンK2を合成する能力をもっています。
これら2種類の天然ビタミンKは、働きの強さはほぼ同じと言われています。
■ビタミンKの発見
ビタミンKは、1929年にデンマークの研究者ダムという人によって発見されました。ダムは、脂質を全く含まないエサで育てたニワトリが、筋肉や皮下などに多量の出血を起こし、その血が固まりにくいことを見つけました。
この出血は、その当時すでに発見されていたビタミンAやD、Cなどの各種のビタミンを与えても治らず、ダムは脂質中に含まれるなにか新しいビタミンが関係しているのではないかと考え、その未知の物質をビタミンK(Kはドイツ語で「凝固」ということばの頭文字)と名づけました。その数年後、この物質は純粋な形で抽出され、出血を止める作用のあることが認められ、ビタミンKの存在が明らかになりました。
■ビタミンKの働き
◆ 血液をサラサラにし必要な時には血液を凝固させる。
ビタミンKは、普段は、血液をサラサラにし流れをよくする作用があり、出
血時には血液を凝固させ出血多量を防ぎます。つまり血液の状態を常にバラ
ンスよく保つ働きがあります。
◆ 骨を強くする。
骨にカルシウムが沈着するのを助けるのと同時に、骨からのカルシウムの流出を防ぎます。このため、ビタミンKは骨粗鬆症の治療薬として認可されています。
■不足すると?
月経時の大量出血、血尿、血便、吐血、流産、鼻血、貧血、骨粗鬆症などを起こしやすくなります。また、新生児においては新生児出血症(消化管の出血)や頭蓋内出血の発症率が高くなります。
■どんな人に不足しやすい?
ビタミンKは、体内で合成されるため健康体であれば、あまり欠乏することはありません。ただし、次のような人で、上記であげた不足の症状が見られる人はビタミンKが欠乏している可能性があります。
● 生後まもない赤ちゃん
生まれたばかりの赤ちゃんは、体内にビタミンKの蓄えが少ないうえ、腸内細菌がきちんと作られていないため、体内で十分作ることができません。したがって、ビタミンKが不足しやすくなります。
● 抗生物質を持続して飲んでいる人
抗生物質服用により腸内細菌が死滅するため、体内でビタミンKが十分に作られず不足します。
● 高齢の人
高齢になるとビタミンKの吸収が悪くなるため不足しやすくなります。
■多く含まれる食品
ビタミンK1は、ほうれん草やブロッコリーなどの緑色の濃い野菜や、わかめ、ひじきなどの海藻類に、ビタミンK2は、納豆やチーズなどの発酵食品に豊富です。
平均寿命が年々延び、世界一の長寿国となった日本ですが、長生きの人が増えるとともに、骨がスカスカになる骨粗鬆症にかかる人も増えています。この骨粗鬆症の日本国内での発症分布は西高東低の傾向にあります。なぜ、このような傾向にあるかというと、実は納豆の摂取量が違うからです。西日本の人は納豆をあまり食べないためビタミンKが十分にとれず、東日本の人に比べ骨粗鬆症にかかりやすいというわけです。
---2001.4.28 (c) 2001 by Mari Wakasugi ---
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