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[No.056: アスペルガー症候群]


 昨年は「一度殺人を経験したかった」という理由で愛知県の主婦が高校生に殺害されました。その高校生は精神鑑定の結果「アスペルガー症候群」と診断されました。聞き慣れない症状名ですが、実際には何人もいて、十分な対応や周りからの理解がないため、さまざまな問題が生じています。

■アスペルガー症候群とは?

 1944年にオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーが症例報告したものが、最近、世界的に注目される「アスペルガー症候群」として精神医学の教科書に載るようになりました。

 アスペルガー症候群は、「発達障害」の1つで、自閉症の仲間に入ります。一般に自閉症というと、障害が重く言語能力も困難な場合を指し、知的発達障害を伴っています。しかし、知的には正常レベルの自閉症のことを「高機能自閉症」といい、その高機能自閉症の仲間で、より正常に近い能力をもつのがア スペルガー症候群です。

 病気の原因は不明ですが、脳の先天的な生物学的異常ではないかと考えられています。スウェーデンの調査によると、300人に1人くらいの割合でみられるといわれています。

■具体的な特徴

 アスペルガー症候群の特徴は、コミュニケーションや対人関係、想像力の領域の偏りや遅れといった能力障害があり、自閉症の特徴とも共通しています。

 自閉症と違うのは、知能が平均または平均以上あるため、普通に通学もでき、適切な指導や援助があれば、成績も高く、就職できる人も少なくありません。また、言葉を話す力の遅れもないため、わからない場合が多いのです。

 しかし、話す力と理解する力に大きなギャップがあるため、流ちょうに話していても、相手の言葉の意味を察することができず、集団行動や対人関係でトラブルが起きることが少なくありません。

 また、人の顔の表情や声の調子などを読む事ができないため、悲しんだり、喜んだりといった相手の感情や心の様子を想像することができません。その結果、周りの人がギョッとするような自分勝手な行動や発言をすることがあります。さらに、限られた狭い興味や関心や活動を持ち続けるのも大きな特徴です。

 例えば、子どもの場合、乗り物や数字、自分の好きなものだけに、強く関心を持ち続けたり、先生や他の子どもの気持も考えずに、一方的に自分の関心のあることだけを話したり、自分のことは上手に話すのに、TPOにあわせた挨拶や受け答えなどがうまくできないといったことがあげられます。

■周囲に理解されにくい

 アスペルガー症候群の人は、子どものころは普通に学校に通っていることがほとんどです。しかし、この障害についてあまり広く知られていないため、先生や周囲の人から性格やしつけの問題と判断され、反感を買ったり、仲間はずれやいじめの対象になることが少なくありません。

 その結果、不登校になることや、いじめられて情緒不安定にり、攻撃的な行動に出てしまうこともあります。しかし、必ずしも犯罪と結びつくわけではなく、被害者になる場合のほうが多いのです。

 大人になってからも、杓子定規で融通がきかない、趣味などに限りなく没頭してしまう、といった特徴が残ります。職場などで、自分のもつ知識に強くこだわったりするため、変人と思われ、周囲から浮き上がることも多いようです。

■診断おける問題点

 小学校に入ってからの診断ができるようになりますが、児童精神科の専門医であれば、幼児期にも可能です。「友人ができない、集団内で孤立している、社会的状況を判断して行動できない、興味が偏りやすい」など、子どもの様子で気になることがあれば、まず児童精神科の専門医に相談しましょう。

 しかし、実際には精神科はあっても、児童や青年を専門とする精神科医が不足しています。日本児童青年精神医学会の認定医は、全国で100人にも満たない状態です。これは厚生労働省が、児童青年精神科を標榜科名として認可していないのが原因です。つまり、医学部や医科大学には児童青年精神医学を専門とする科がなく、教授もいない状態です。子どもの心の問題についての専門家が、早く増えることを祈ります。

■周りの理解が必要

 今のところ、治療法がないため、アスペルガー症候群の特徴を抱えた状態で、社会生活ができるように、2つの方法で対応をしていきます。

 ひとつは、本人に対していろいろな場面での対人関係のつくり方やあいさつの仕方を始め、場面に応じたコミュニケーションを指導することです。

 もうひとつは、周囲の人たちへ、アスペルガー症候群についての理解を深めるための働きかけです。親や家族、担当医が中心になり、学校の先生、友人、周りの人たちに、理解を求めるように働きかけることです。アスペルガー症候群の人を犯罪の被害者でも加害者にもしないためには、周りの人の理解が必要 です。

 現代のストレスフルな暮らしには、こだわりが強い人やコミュニケーションがうまくない人に会うと、すぐにムカつく人は多いでしょう。故意に相手の気分を害することをする人もいますが、なかには、そういった障害をもつ人もいるかもしれません。もし、そういうことがわかれば、理解や協力を惜しまない ようにしていきたいものです。

---2001.3.3 (c) 2001 by Mica Okamoto ---

 

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