アトピー・カウンセリングのワークショップ
アトピー・カウンセリングのワークショップを開催した。
(9月8日 アトピーカウンセリング 1Day ワークショップ)
講師・ファシリテーターは、明石郁生さん。
生まれてすぐに喘息を発症、2歳で母をなくし、ステップファミリーに育てられた。
大人になってからアトピーを発症し、ひどいアトピーで社会人になって仕事でもひじょうに苦労され退職。39歳で渡米し、アメリカでアトピーを治療し完治された。
アトピーや喘息で死の恐怖を体験したこと、生育歴やアトピーによって社会でつらい思いをしている人をケアしたいと、心理カウンセラーになった。
今日のワークショップは、明石さんのアトピーの実体験やアメリカの治療法についての話だけでなく、参加者のそれぞれの症状と向き合い、どのようにアトピーと対峙してきたか、そのときの気持ちや感想をシェアリングしながら、今後アトピーを解決していくかについて、全員で対話しながらのワークショップだった。
参加者は、ステロイドや漢方などあらゆる治療法を試してリバウンドを繰り返し、本当に苦労された人、もう打つ手がないといったアトピー患者だけでなく、アトピー患者のつらさをどう理解し協力すればいいかを学びたいという家族も参加。明石さんとの質疑応答、他の人の話を聞き、自分のアトピーにはどのような治療が適しているか、これからのアトピーとのつきあい方のヒントを得たようだった。
●アトピー治療 アメリカと日本の違い
明石さんの話のなかで印象に残ったのは、日本のアトピー治療とアメリカの治療との大きな違い。
アメリカは、医療サービスであり、患者さんが満足を得られないと良いサービスではないと評価される。お金を払ったにも関わらず効果を出せなければ訴えられてしまう場合もある。そのため、患者さんが満足を得る結果を出す医療である。
一方、日本の医療は、行政のガイドラインにそって行われ、それを超えることはできない。そのため結果を出すためにリスクを背負うことはできない。なので、「薬を使って様子をみてください」になる。
また、日本では、アトピーもアレルギー性皮膚炎も同じ扱いだが、アメリカでは原因別にきちんとわけられ、対処法も違う。日本でアトピーとされているものも、アメリカでは違う病名になる可能性もあるのだ。
アメリカの治療が絶対良いということでないが、日本の病院では聞いたことのない理論を聴き、みなさん納得したり、次のステップに希望を持った様子だった。
●アトピーの心的影響の大きさ
アトピー患者は、家族や友人との人間関係の葛藤、あらゆる意欲が低下し自暴自棄になったり、精神的な不安定さ、再発の恐怖などは、言動や性格にも大きく影響する。これらの自分自身との闘いは、アトピーを経験しないとわからない。
明石さんは、「アトピーによるさまざまな苦労は、一種のトラウマ。トラウマには癒しが必要」といい、アトピーで起きる心の諸症状をカウンセリングの手法で改善しようとしている。
「アトピーの人は、そうではない人がもってない才能を持っている」と明石さんは語るが、アトピーの経験によって得た、人との関係、心の敏感さなどは、他の人には持ち得ない才能だともいえる。
私自身、子どもたちが生まれて間もなくからアトピーだったため、この病気について勉強もしたし、どうすれば痒みなどの症状が軽減するか、イライラせず笑って過ごせるか、他の子が食べても自分は食べられないという気持ちに寄り添えるかなど考えをめぐらし、いろいろな医療機関や薬、民間療法を試した。そのせいもあってか、子どもたちの身になって想像力を働かせ、いろんな意味でコミュニケーションはとってきたと思う。また、子どもたちにとって、アトピーであったこと、家庭でのやりとりが成長過程に、少なからず影響を及ぼしているはずである。
アトピーは今の日本の医療では完治は難しいし、生活習慣の変化、ストレスなどでも再発する。アトピーを単なる皮膚疾患で済まさず、生活習慣や心理面と密接な関係があるという病気の特性を知ったうえで、メンタルのケアをすることはとても重要であるが、日本ではまだそういう視点での研究はあまり行われていない。
明石さんのような取り組みをする人が少しでも増え、アトピー患者が孤立せず、自助的なネットワークをつくり、少しでもこの病気で苦しむ人が減ってくれればと願う。