いじめの傷跡は、心に長く残る
いじめは、心身に大きなダメージを残す。身体の傷は治ったとしても、心の傷は長く残り、その被害者の人生に大きく陰を落とす。マイナス志向や対人恐怖、自尊心の低さ、うつ・・・。米ボストン小児病院などの研究チームが、いじめは子どもの心と体の健康状態悪化に結びつくと小児学会誌に発表した。
いじめをどのように定義するかは簡単にいえないが、被害を受けた側が、いじめだといえば、それはいじめなのだ。
人間社会でいじめを根絶するのは無理だが、回避するためのスキル、受けた傷の的確なケアが十分にされる環境になればいいのだが。
●いじめ被害者、心に長く残る傷跡 米調査
(CNN 2014.02.19)いじめは子どもの心と体の健康状態悪化に結びつき、特に過去にいじめられた経験を持つ被害者や、現在いじめられている被害者ではその傾向が強いという調査結果を、米ボストン小児病院などの研究チームが小児学会誌に発表した。
研究チームはカリフォルニア州ロサンゼルス、テキサス州ヒューストン、アラバマ州バーミンガムの3都市で公立学校に通う児童生徒4297人とその保護者を対象に、3段階の面接調査を実施した。対象者の世帯収入は年間5万ドル(約510万円)未満の層が60%強を占め、保護者の学歴は高卒以下がほぼ半数を占めている。
1回目の調査は子どもが小学5年生の時に実施。続いて7年生(日本の中1)と10年生(同高1)の時に実施し、過去と現在のいじめについて尋ねるとともに、心身の健康状態をチェックした。
その結果、5年生の時の調査で心の健康状態が悪化していた児童の割合は、いじめられた経験のない児童が約4%だったのに対し、いじめられたことのある児童では31%に上った。
10年生になった時の調査では、現在も過去もいじめられているという子どもの約45%に心の健康状態悪化が見られた。現在いじめられている子どもでは31%、過去にいじめを受けた子どもは12%、いじめられた経験のない子どもは7%だった。
肉体的健康といじめとの間にも同じような関係があることも分かった。ただし心の健康との関係ほどは強くなかったという。
10年生では現在も過去もいじめられている子どもの30%、現在いじめられている子どもの19%、過去にいじめられた子どもの13%に強いうつの症状があった。いじめられた経験がない子どもでは8%にとどまった。
また、過去、現在ともいじめを受けている子どもは、自尊心が最も低いことも分かったという。
3回の面接調査のうち少なくとも1回で、頻繁にいじめに遭っていると答えた子どもは、調査対象者の約30%に上る。
この論文をまとめたボストン小児病院のローラ・ボガート准教授は、「いじめによる怒りや抑うつといったマイナスの感情は、時と共に雪だるまのように堆積される」と指摘している。