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ボランティアも心のケアを

05.07.2011 · Posted in 社会貢献, 震災復興

東日本大震災後、ボランティアをしようとする人が増えている。被災地の惨状を知ると、被災者のために、何かしなければという焦りにも似た感情が出てくる人が多い。

ボランティア向けメンタルケア・セミナー 【被災者支援の際に知っておきたいメンタルケアの知識】に参加した人たちを見て、「被災者のためにできることを」という気持ちで、なんの準備も心構えもなく被災地に出向くと、想像しえなかった状態に陥ってしまうのを痛感した。

自分自身も宮城県の被災地に調査に行った際、あの光景を見て、「何、これ…」という感覚だった。初めて見る光景に、どう反応していいかわからない。そして、被災した人々のいろいろなエピソードを矢継ぎ早に聞いた。津波で街や家々が壊れていく様子、どのように避難したか、家族との連絡、帰りたくても帰れない心境、家族や知人の安否確認、どこに避難するか、物資は、食料は、電気は、学校は、子どもたちの様子は……
すべてが、自分には経験のないことばかりである。

なんとなく想像はしていても、生の声で聞く話のリアルさは、ハンパのないインパクトがある。しかし、そのときは何か他人事のような感じで、怒涛のような話を、ただ聞いているだけ。それほど自分が衝撃を受けていると気づかない。でも、話を聞くにつれ、「なんとかしないと」という気持ちがだんだん濃くなっていく。他人事だと放っておけなくなる。そして、感情移入も激しくなっていく。

セミナー時の質疑応答でも、被災地でボランティア活動をした人から数々の質問が出た。

〜被災者の話をどのような表情で聞けばいいのか。
〜「大変でしたね」なんて、軽々しい言葉はかけられない。なんて、言葉をかけていいかわからない。
〜相手の話を聞いて、泣いてしまってもいいのか。
〜自分の家に帰って、おいしいものを食べて、お風呂に入って、自由に暮らすことに後ろめたさを感じる。
などなど、被災地での経験で、何かしらのストレスを抱えてしまい、どのように対応していいかわからない人たちがいる。

被災者のPTSDをボランティアしたことで、もらってきてしまっているのだ。
ただ、本人たちは、自分がひどく被災したわけでもないのに、そんな状態になっていることに気づかない。そして、何かもやもやしたまま、被災者の支援をしなければ…と漠然とした気持ちを抱えて、次のボランティアに行こうとする。

そこで重要なのでは、被災者を支援することによって、自分にもその心理状態が伝播する可能性があることを知っておくこと。
事前にそれがわかっていれば、ボランティアする前と後との違いを客観的に見ることもできるだろう。そして、何かをもらってきてしまったら、どう対処すればいいか、対策も考えられると思う。

支援する側が、不安定に揺らいでいて、しっかり立っていないと、きちんとした支援はできない。もし、いつもと違うことに気づくことができれば、きちんとケアをすべきだろう。

ボランティアは支援する側だからといって、万能であるわけでもなく、自己犠牲をしなければいけないわけでもない。健全でないと、よりよい支援はできない。被災者支援のボランティアをする際には、自分の心のケアに十分気をつけておくことがとても大切なことだと思う。

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