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ママたちの不安(2)〜小学生ママたちの苦悩

06.27.2011 · Posted in 原発・放射能, 子ども

6月21日〜23日、子どもの放射能による健康被害を心配する神奈川県のママたちからのリクエストにより、ガイガーカウンターで空中放射線量測定にいった。

3日間で行ったエリアは6エリア。1エリアにつき、小学校や幼稚園、公園など3〜6カ所程を測定。小学校では、正門付近・校庭中央・砂場・遊具付近・水飲み場・校舎入り口・プールなど、公園では、砂場・滑り台下・水飲み場・ブランコ・植木の茂みなど、子どもが好きそうな場所を測定した。

3日間で会ったママは、22名。2歳のお子さんのママ2名を除いて、幼稚園や小学校の子どもがいるママである。

●給食について

今回会った人たちは、給食に使われる食材や学校の放射線対策について担任や校長に直接会って訴えた人が半数以上。ネットやTwitterでは、「給食を食べさせない、牛乳を飲まない」というのをよく見かけるが、実際には、どの人もクラスに1人、学年に1人、学校に1人というのがほとんど。多くても学校で3、4人という程度。学校の生徒数が、学年2クラス〜4クラスで全校生徒が400人〜800人だとすると、400分の1,500分の1の確率で、0.5%にも満たない数。

放射線の健康被害を気にするママは多いと思われるが、実際に学校に要望を言ったり、牛乳をやめさせるアクションまで起こしている人というと、ものすごい少数派なのだ。たまたま、Twitterやメーリングリストで、同じ区域、同じ小学校だったのを知って仲間ができ、今回の計測で、バラバラの小学校のママたちが、近くのエリアでの計測を知って、参加したという人たちもいた。

給食問題について「懇談会で思いきって質問しても、みんなの反応は今いち」、「教育熱心そうなPTA会長にいっても、そんなに心配ですか?っていわれた」、今年生まれの下のお子さんがいるママは「赤ちゃんがいるから心配ですよね。神経質になるの、わかります、とまるで育児ノイローゼっぽくいわれた」と、大半のママたちとの温度差は大きく、ママ友同士でも、簡単にこの話題に触れられないという。そのため、今回の測定で会った人たちは全員が初対面でも、同じ意志を持つ人同士で情報交換ができたことを喜んでいた。

以前、6月初旬に計測に行った頃は、お弁当持参に校長や担任が難色を示していたが、今回は学校の姿勢が柔軟になっているところが増えていた。横浜市教育委員会が、すでに横浜市立学校の校庭における放射線量測定を発表していることも関係している。お弁当を持たせること自体にNOという学校はなさそうだ。ただ、「それは、心配ですよね」と気持ちをねぎらってくれる先生もいれば、「他の子への影響があるので、放射能という言葉は使わないでください」という先生や、嫌味たっぷりな感じの先生もいるように差はある。

小学校に通う子どものうち低学年の子は、「牛乳を飲ませないで、水筒をもたせている」というのが圧倒的に多かった。給食に関しては、「お弁当を持参している」、「ご飯などの主食は給食で、おかずのみ持参」、「乳製品は残すようにしている」という人が多かった。

横浜市で5月20日、一番最初にお弁当持参をOKしてもらったママは、ブログを書き、それがネットに伝わり、ちょっとした話題になったそうだ。渋る学校側に対し「担任は1年間、学校は6年間のつきあいですが、この子の健康は一生の問題。先生たちは、この子の人生に何かあったとき、責任をとってくれるんですか?」と詰め寄ったという。

ただ、子どもの学年が上がるにつれ、牛乳も給食も食べている子がほとんど。「自分だけお弁当でみんなと違うのは嫌だ」というのが理由だった。友達関係ができあがってくると、親の言う事をすんなり聞けなくなる。それで、仲間はずれなどになるリスクも考えると親も強要できない。それでも給食の献立表を見て心配な食材があると「今日は、◯◯はなるべく残してね」と朝伝えるのだそうだ。

低学年の子でお弁当をもたせているママは「今のところ、周りのお友だちからは、お弁当をうらやましがられてるみたいです」といっていた。これから学年があがるにつれ、お弁当組が増えるかもしれないが、子どもの人間関係も複雑になっていくため、いろいろな対応も必要になってくるかもしれない。

●学校の対応

今回の測定では、6つの小学校を測定した。そのうち校内で計測OKだったのは2校。ひとつは、副校長が校門まで出てきて対応してくれた。もう1校は、プールサイドの測定のために先生が付き添って解錠してくれた。

他4校は、校内はNG。理由は、「横浜市が測定するので、独自計測は必要ない」「計測結果を公表するのは困る」とのことだった。そのため、校門や通用門の外など学校周辺での計測になったが、通りがかった先生は「あとで数値を教えてくださいね」と関心がある先生もいた。

先生たちも、正式に許可を求められたら、立場上NOといわざるをえないのだろうが、個人的には気になっている先生も少なからずいるのは確か。先生で子どもの健康への影響を気にしないという人がいたら、それは教育者としてふさわしいかどうか疑わざるをえない。ただ、文科省、教育委員会からの通達がきている以上従うのが公務員だが、子どもの状態や健康のことを現場の教師が、もっと積極的に対応するべきではないだろうか。

●プール

ちょうど今週くらいから小学校のプール開きだが、プールを心配するママは多い。「雨の翌日は怖い」とみんな口をそろえていう。プールの水をどれくらいの頻度で入れ替えるのか。これも学校によってバラバラ。毎日、半分以上ぬいてゴミをすくって入れ替える学校もあれば、ゴミはすくうが水の入替は1週間に一度のところも。「プールは全部見学にしました」という人は、多かった。ただ、見学の理由も学校から放射能の影響を心配するというのではなく、個人的な体調不良にするように言われていた。お弁当と同様に、他の生徒への影響を考えてのことだろう。

元々、シーズン外に、雨水がたまったままゴミや虫が浮いていたりするのを見て「子ども自身が学校のプールには入りたがらない」「スイミングにいって十分泳げるので、学校のプールに入らなくてもいい」という人も。なかには、「プールの水を校庭や花壇にまいている。いったい、校長は何を考えているのか」と憤慨している人もいた。

●マスク

登校時には、マスク着用を守っている子もいるが、「マスクのなかであせもができちゃって。登下校以外、教室の中では、はずしていいよといいました」という人も。校庭で遊ぶときにもマスクというのは、子どもにはつらい。「家を出るときと帰ったときはマスクつけているけれど、ときどき、逆になってたりするんで、学校じゃはずしてるんじゃないかな」というママも。

ただ、子どもたちは、ママが自分たちの健康を考えてくれるという気持ちが伝わっているのか、なるべくちゃんとつけようとしている姿が、とても痛々しい感じがした。

●自然の多い環境が心配のタネに

どの学校も自然に恵まれた素晴らしい環境の小学校ばかり。校庭がとても広い学校、学校専用の広い菜園で枝豆やトマトなどをつくっているところや、校庭の隅でさつまいもを栽培している学校、ビオトープがある学校、森のような緑に隣接している学校、通学路が竹やぶに囲まれたトトロの森のようなところもあった。この学校の環境が気に入って引っ越してきた人もいた。

それが今では、草木や土に染みこんでいる放射線を気にすると、栽培で土をいじるのも、せっかく自分たちで作った野菜を食べるのも、緑あふれる茂みでかくれんぼするのも、すべて心配のタネになってしまっている。測定してほしい場所について、あそこもここも、と子どもが好きそうな場所はすべて気になってしまうママたち。緑多い自然環境でも、外であるだけで、線量が高くないか心配になってくる。

今まで子どもにとって良いと思っていた環境が、すべてリスクにつながるかもしれないという、真逆な状況。考えるだけでも、ストレスになる。

「外で思いっきり遊ばせたいのに、あまり外では遊ばせないようにしないといけないことを考えるとつらい」、「屋内ばかりでは、ストレスがたまるのではないか。でも、正直あまり外に出したくないですね」、「少年サッカーチームに所属しているんですが、3・11以降ずっと休みでした。練習が再開した後は、ちょっと心配で隔週にしか行かせていません」、「友達がやり始めて、息子も少年野球をやりたいと言い始めたんですが、以前からスイミングと空手をやってるので、『野球は来年からね』といって引き延ばしています」。子どもらしく遊ばせたいが、外遊びは避けたいという苦悩の声。修学旅行で日光へ行くのにも、どうしようか迷っているという人もいた。

子どもの健康のことを考えたら、リスクがありそうなことを避けるのに、やりすぎはない。何もなければ笑い話で済むが、何か起きてしまってからでは後悔しても遅い。ただ、リスク回避を最大限考えるせいで、子どもとして思いっきり楽しむ時間を制限してしまうことに罪を感じるママたちがいる。子どもと暮らすシーンが、常に究極の選択になるつらさに、どう向き合うか。まだまだ続くママたちの苦悩には、誰がどのように答えを出せるのだろうか。

 

計測結果は、こちら。
【放射線量測定】
6/21(火)公園・小学校など (横浜市青葉区)
6/22(水)公園・小学校など(川崎市高津区・宮前区・横浜市青葉区)
6/23(木)小学校・幼稚園・公園・学童(横浜市緑区・青葉区)

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