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性犯罪での「同意」の解釈

03.01.2017 · Posted in 女性問題, 社会

「被告人が「無神経」な男性だったため、被害者に拒絶の意思があったことを理解できなかったと判断し無罪を下している。」

「同意」の解釈、違和感ありすぎ。
こんなことで「同意した」ことになってしまうのか?と愕然する。

普通に考えるとおかしいこと、明らかに相手が悪いことでも、性犯罪になると、法は被害者を守らない。

【性犯罪刑法改正】一番大事な「同意」の話
小川たまか | ライター/プレスラボ取締役 2/27(月) 16:30

https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20170227-00068160/


■「怖くてイヤと言えなかった」は強姦と認められないことも
「怖くてイヤと言えなかった」
「早く終わってほしいから、黙って耐えた」
この状況は、刑法では「強姦」として認められない可能性があります。

「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」(※1)が昨年11月12日に行ったイベント「ここがヘンだよ日本の刑法性犯罪」では、こんな説明が行われた。

同プロジェクトは、今年国会で審議される予定の性犯罪に関する刑法の改正に向け、改正に関する議論を盛り上げるためのイベント開催やロビーング活動などを行っている。改正案には、法定刑の見直しや男性は被害者に含まれない現行の「強姦罪」の見直しなどが盛り込まれ、改正されればおよそ100年ぶり(※2)。

同プロジェクトが一つの大きな議論のポイントと考えているのが、強姦罪の「暴行・脅迫」要件だ。

現行刑法では、被害者が13歳以上のときは、被害者に対して加害者が暴行・脅迫を行い、被害者を抵抗できない状態にして姦淫した場合において「強姦」と見なされる。この「暴行・脅迫」要件があるため、冒頭での説明のように、加害者が被害者に性行為を迫った際に「怖くてイヤと言えなかった」「早く終わってほしいから、黙って耐えた」というケースでは、被害者が抵抗できない状態であったと認められず、刑法で「強姦」とならないことがある。

■加害者が無罪になった理由は「無神経」だったから

実際にあったケースとして、同プロジェクトが作成したブックレット「性暴力被害者からみた ここがヘンだよ日本の刑法(性犯罪)」では、次の2つが紹介されている。

(ケース1)ーーー
ゴルフ教室を主催する男性は、生徒である18歳の少女をゴルフ指導の一環との口実でホテルに連れ込み、姦淫した。被害者が強い支配従属関係であったとは認められず、解離状態であったことを裏付ける事実も認定できなかったことから、「抗拒不能に陥るほどではなく、自分から主体的な行動を起こさなかった可能性も排斥できない」と判断され、無罪を言い渡した。
(鹿児島地方裁判所 平成26年3月27日判決)

出典:「性暴力被害者からみた ここがヘンだよ日本の刑法(性犯罪)」

(ケース2)ーーー
24歳の男が中学生女子に声をかけ、性交した行為が、強姦罪として問われた。少女が性交に同意していなかったことは認められるが、被告人が「犯行を著しく困難にする程度の暴行」を加えたとは認められず、また「男が少女が性交を受け入れたと誤信した」疑いは払しょくできないとして、無罪を言い渡した。
(大阪地方裁判所 平成20年6月27日判決)

出典:「性暴力被害者からみた ここがヘンだよ日本の刑法(性犯罪)」

(ケース1)では、その後の福岡高裁判決でも無罪が言い渡されている。高裁判決では、被害者に合意の意思がなかったことや、さらに精神的な混乱から表立った拒絶ができなかったことをほぼ認定したが、被告人が「無神経」な男性だったため、被害者に拒絶の意思があったことを理解できなかったと判断し無罪を下している。

男性が「弱者の心情を理解する能力や共感性に乏しく」、「むしろ無神経の部類に入ることがうかがわれる」ことが、無罪の理由となったのだ(「」内は福岡高裁判決文より)。

こうしたケースを受け、同プロジェクトは「法が定める性犯罪と実際に起こっている性暴力に『ズレ』がある」ことを訴える。

筆者がこうしたケースを見て思うことは、なぜ被害者ばかりが「どれだけ抵抗したか」「どのように抵抗したか」「加害者にも伝わるように抵抗したのか」を立証しなければいけないのかということだ。加害者が「どのように同意を取ったのか」を立証することにこそ重きが置かれるべきではないのか。

また、セックスには同意が必要であり、同意がなければそれはセックスではなく「暴力(性暴力)」だ。被害者にとってそれが「暴力」であったことが認められているのに、加害者が合意だと誤信したことが「無罪」の理由になるのはなぜなのか。殺す意図がなく結果的に人を殺めてしまった場合、それは「過失致死」という罪になるが、強姦に「過失強姦」はない。

ブックレットの中では、「日本では、暴行脅迫がなくても強姦罪を問えるのは13歳未満だけど、アメリカやカナダでは16歳未満だったり、加害者と被害者の年齢差で定めているんだって」「スウェーデンでは、加害者側が、誤信に至った合理的な理由を説明できなければ、同意とみなされないんだよ」など、他国の法律との比較も紹介されている。

■「同意って何?」考えるワークショップ

実は、審議中の性犯罪刑法改正案では、暴行・脅迫要件の緩和は盛り込まれていない。審議に向けての検討会では論点として挙げられていたが、法制審議会を経てまとめられた修正案骨子では採用されなかった。

しかし同プロジェクトでは、この「暴行・脅迫」要件の撤廃修正を諦めずに求めている。議論のきっかけとして予定しているのが、「同意に関するワークショップ」だ。

性交渉において、両者の「同意」に関する考え方に著しく差がある場合がある。昨年から今年にかけて報じられている強姦事件や集団強姦事件でも、加害者側が「合意/同意」を主張することはたびたびある。そこで、「同意」について考え、共通理解を図りたいというのがワークショップの意図だ。

2月18日に行われたワークショップのパイロット版が行われ、約15人が参加した。このワークショップは、アメリカやイギリスの大学で行われる「Consent Workshop」を参考に企画されている。

約2時間かけて行われたワークショップでは、下記のようなシナリオを基にケースワークも行われた。

(Scenario)ーーー
良い営業成績をあげたお祝いとして、いつもお世話になっている上司が、最近できた美味しいレストランに連れて行ってくれると言った。今まで毎日夜遅くまで二人で頑張って働いてきたし、今後のキャリアについてもアドバイスをもらうチャンスと思い、乗り気な返事をした。

食事とお酒が進むにつれて、お互いのプライベートの話にやたらと話題がいく。恋愛事情についても聞かれ、この人酔うとめんどくさいなぁと思いながら、適当に愛想笑いでやり過ごした。
せっかくだから次の店に行こうという話になり、レストランを出たその瞬間。急に抱きつかれ、キスをされそうになった。

びっくりして腕を振り払ったら、相手は戸惑った顔をした。その後帰り際に、「俺と二人きりで食事に来るなんて、好きだと思われても仕方ないだろ」と少し怒った口調で言われた。
ーーー

参加者は「このケースに同意の尊重はあったか」「なぜそのように思ったか」「登場した人たちは、それぞれどんな気持ちだったか」「このようなケースではどのように行動するのが良いか」などをグループになって考える。

筆者も参加したパイロット版ワークショップのディスカッションの中では、「実際にこういう状況になったことがある」「この女性は拒否できたから良かったけれど、力の差が大きくて押さえつけられてしまうこともある」などの話が出た。

結果的に、ケースワークを行った2グループが「同意の尊重はない」と回答、1グループが「女性が腕を振り払って拒否をして、上司は戸惑った顔をしたにしてもそれ以上は求めなかった。彼女の拒否は尊重されたのでは」と回答した。

このほかには次のような意見が出た。

「部下は上司に誘われれば断りづらいという関係性を上司側が理解していなかったと思う」

「女性が同意したのは一緒にご飯を食べることで、それ以上についての同意はないし、同意の確認もなかった」

「本当に好きだったら、急に抱きつくようなやり方はしないのでは。上司は体目的だと思われても仕方ない」

「女性は仕事のパートナだと思われていると思ったら、そうではなかった。それはショックなことでは」

あなたはこのシナリオを読んで、どんな印象を持っただろうか。

■「息子さんに、同意を得ることを教えてください。娘のいる親に、注意するように教えさせる代わりに」

ワークショップでは、この他に2つのシナリオを基にディスカッションが行われたほか、どのようなかたちで「同意」を取ることが好ましいのか、逆に「同意」とならないのはどのようなときかを参加者らが考えた。

性交渉の際に“受け身”側になりがちな女性の方からも「自分の意思」を伝える必要があるという意見が出た一方で、「拒否を伝えなかったことは本人の責任にはならない。性交渉においてアクションを起こす側が、同意を取っていこうという教育を」という意見もあった。

確かに、前述したような裁判例のようなケースはまさに「拒否が相手に伝わらなかったことが本人の責任」とされた例だ。性交渉というと対等な男女関係の中で行われるものを想像しがちだが、実際はそうではないことも多い。親と子、上司と部下、教師と生徒、年の離れた異性など関係性を利用した性暴力が数多く起こっている。

今年1月に「性的暴行は被害者のせいじゃない 親たちが息子の育て方を変えれば、女性は救われる」というBuzzfeedIndiaの翻訳記事が出た。

「息子さんに、同意を得ることを教えてください。娘のいる親に、注意するように教えさせる代わりに」(記事より引用)

被害者に防犯を求めるのではなく、加害者に同意を取ることを教えよ。なぜなら、性暴力は加害者の意思以外で起こりえないから。インドで起こった凄惨な性犯罪事件を「日本とは違う」と思いがちだが、実際のところ、加害者に「同意を得ること」を教えず、被害者に「注意せよ」と言い続けているのは日本も今のところ同じだろう。

ワークショップを主催した「ちゃぶ台返し女子アクション」共同発起人の大澤祥子さんは、今回の開催について次のように言う。

「同意というと難しく聞こえますが、積極的にコミュニケーションを取り合い、相手の意思を確認し尊重することだと思っています。性教育の中でも普段の生活においても同意について考える機会がほとんどない中で、同意とは何かを話し合う場を作れたことには大きな意義を感じています。今後は、このようなワークショップを通じて同意が大切であるという意識を広めるとともに、何が同意であるかについて社会全体で共有認識が生まれるきっかけにつなげたいです」(大澤さん)

ワークショップでは、このほか「○○○(ヒロインの名前)の意思は関係ねえ。〇〇〇を欲しいなら俺の許可を取れ」と恋敵に言う男性のセリフが「キュンとする要素」として描かれるなど、「男性から支配されることがいいことであるかのような描写や、強引であることが男らしさだという刷り込みが人気のある少女漫画でも行われている」と指摘された。

次回以降のワークショップでは、「男性の参加者も募り、男性からの意見も聞きたい」という声も。改良を重ねながら、今後も続けていく予定という。

ワークショップでは最後に、お茶をすすめることにたとえて「同意」を説明する動画が紹介された。これはイギリスの警察が制作したもの。この動画の意味や必要性について、あなたはどう考えるだろうか。

(※1)(※)<刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト>は、「明日少女隊」「NPO法人しあわせなみだ」「性暴力と刑法を考える当事者の会」「ちゃぶ台返し女子アクション」の4団体から成る。

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